未来にキスを  otherwise

非常に評価の難しいゲームです。このゲームを評価すること=自分にとっての価値観、と捉えられないこともない気がします。
今更、価値観も何もこの場においては無いようなものですけど。
遙ぁ〜遙ぁ〜
とか未だに言い続けてる時点で何を言ったところで俺にとっては羞恥プレイにしかならないし(爆)
じゃあ早速いきましょう。

「お兄ちゃん、ボクのこと奴隷にして?」
居候先の親戚の家の従妹のその言葉で、物語はスタートします。
奴隷といっても、鬼畜な行為に走ったり、凌辱したりはしません。
見ていて羨ましくなるくらいLOVEな展開が繰り広げられます。
夜はもちろん、学校でも隙あらばとセックスします。こいつら。
典型的なバカップルと言ってしまえばそれまでなんだけど、早い話が「Natural」(F&C)みたいなゲームです。
まだあっちは鬼畜モードがありましたが、これには無いです。ちょっと不満です(爆)
基本的なストーリーの流れは、このまま奴隷生活を続けるか、別のヒロインとの恋愛に走るかに分岐します。なんてことない、王道ですね。 ヒロインは4人。

「はみゅ」とか「はみゃ」とか時々電波ワードを口ずさみながらお兄ちゃん(主人公)にベタベタして、一昔前のコギャルを現代のいわゆる「萌え」路線に置き換えたかのような、一言で言えば頭のおかしい足りない幼なじみの従妹、飛鳥井霞

霞の親友で、見た目も中身もインテリジェンス、どう考えても上記のような電波とは相容れなさげなキャラでありながら、当人もなかなかに電波。日常会話に難しい言葉を持ち出し、かつ相手が理解できることは問題じゃなく、一言で表すとドラッグはほどほどにネ♪という感じの眼鏡っ娘、柚木式子

霞が携帯電話のアンテナならこいつはテレビのアンテナ。言動は一見、近代の萌え路線に則っているように見えるが、実はただのキチガイ。彼女の口癖である「くきゅ」は、まるでドラッグを噛みしめる音であるかのごとく。金色ジャンキー、守里椎奈

あの髪型は寝癖なのかどうか、激しく賛否両論巻き起こること必至。この中では唯一まともな萌えキャラであると思われるが、吸い付く先は唇よりもまずはティ○ポというある意味で恐ろしい女、神澤悠歌

いずれもエロゲーキャラとしては過剰に設定されているような奴らばかりです。
にも関わらず、日常会話はあまり面白くない。と言うか、ほとんどつまらなかったです。
面白いところは面白いんですが、どうにもテンポが悪い。
というよりも、そうですね、日常会話が「イベント」であって「イベント」でないんですよ。
まさにそのまんま、普通の日常会話。毎日同じような会話をだらだらと繰り返されます。もう少し細かにイベントCGでもあれば良かったのでしょうが、このシーンにはこんなCGがあるといいな、という想像すらさせてくれないほど平坦な会話が続くんです。
見せるところではきっちり見せてくれるのは良かったんですが、どうにも気だるさだけが残ってしまいます。
あ、霞の最後の方で5人集まるシーンの会話は印象的でした。
普通なら地雷扱いしてもいいような出来なのですが、やっぱりアザーワイズです。エピローグに入ってからの盛り上がりは半端じゃなかった。
あえて言います。他はスキップしてもいいからエンディングだけは見とけ
日常部分はちょっと暗めの音楽になったときとかにctrlから手を離して読み進めれば問題ないです(爆)
4人それぞれにテーマが用意されているんですが、それはこの後のコンプリート後レビューにて。
そして4人クリアすると、最終シナリオに突入します。
個人的にはゲーマー全てにやってみてもらいたい内容になっていると思います。俺の解釈が間違っていないならですが。
エロシーンは、可も不可もなく……及第点かと。 ただシチュエーション的にはすごく萌えさせられました(^-^;
もう学校でヤりたくてもできねーしなー(爆)
個人的に一番ツボだったのは「神社で背徳的」(笑)
同じく神社でのエロシーンがあるらしい、すたじおみりすの新作の月陽炎は買うつもりです。
いつから俺、神社萌えになったんだろうか。

「さぁ、遙。そこに手をついて」
「えっ? これってお賽銭箱だよ?」
「ていうかむしろそこで放尿してくれ」
「そんなのできないよぅ!」
「賽銭箱のお金入れるところって三角木馬がいっぱい並んでるみたいで扇情的な気分にならないか?
そ、そうかなぁ?
「多分神様もお金が欲しいわけじゃないと思うんだ」
「う、うん」
「俺たち人間の愛の証が欲しいに違いないんだ」
「愛の証……って?」
「つまりここでヤろうと言ってるんだ」
「そ、そんなことできるわけじゃないっ!」
「逃げられないぞ、遙。ここはEDEN なんだからな」
「意味がわかんないよ!」
「わからないならその方がいいこともある。さぁ、選んでくれ。ここでヤるか、または賽銭箱に向けて粗相するか」
「嫌だよぅ、この変態っ!」
「あぁっ、遙、もっと言ってくれ!
「変態、変態、変態っ!」
「ああああああああああーーーーーーーー…………」

………………。
非常に申し訳ありませんでした。

ちょっとトリップしてしまったので話を元に戻すとします(爆)

○システム
ビジュアルアーツの汎用、いつものアレってやつです。
使いやすくて好きなんですが、メッセージ巻き戻しのボタンが小さすぎるのが辛い。
AIRの時はウィンドゥ枠のパターン次第では不可視状態になりましたし。
不満はそこだけですね。

○音楽
微妙です。
良いとは思うんだけど、印象に残った曲は最終的に2,3曲でしたね。
主題歌はI've。今回もやってくれましたね。センスオフのときもでしたが、あいかわらず強烈な歌詞です(^-^;
こういう、歌曲の詞を本編と密接に関わらせてあるのは凄く好きです。
ただ雰囲気だけではなく、内容そのものに関与するような。
もっともこの曲に関して言えば、ネタバレそのもののような感じがしますけど。(笑)

○CG
原画はみさくらなんこつさん。
こないだの夏コミで初めてこの方の同人誌読みましたが……。
「あれ、こんなに下手だったっけ?」と(爆)
塗りが悪いのかゲーム原画に向いてないのか……ところどころに明らかにおかしいCGがありました。
立ち絵枚数が少ないのはかなり痛い。せめてこのバリエーションが豊富なら、日常ももう少し(ごにょごにょ)
イベントCGも、あと10枚くらいはあって良いんじゃないか?(^ ^; これも見せるところではバッチリ決めてくれてるので、今ひとつ評価に苦しい部分ではあります。

○声
霞=可愛いけど駄々こねるときの声がむかつく
式子=知的な雰囲気醸し出してて良い
悠歌=とても萌え。こんな声で罵られまくりたい
椎奈=地獄に堕ちろ
以上。


コンプリート後:レビュー

※以下はネタバレを含んでいますので、未クリアの方は注意してください。
今回も各シナリオごとの感想形式です。
最終シナリオの内容にまで触れているので、ほんとに未クリアの方は覚悟して読んでくださいね。

○霞 new testament
自分のすべてを、兄だけのものに。
兄のすべてを、自分だけのものに。
旅行に出掛けていた両親が帰ってくることで、この二週間のように奴隷生活を続けてはいられなくなる。
霞にとって重要なのは、これまでのように毎日肌と肌を重ね合わせなくても、一緒に寝なくなっても、自分がまだ兄の奴隷であり続けること。
今まで自分を奴隷たらしめていた証拠たる、首輪。
そのかわりに主人公は、これからも霞が自分のものであるという証として指輪を贈った。
とまぁ、王道なエンディングなんだけども。
このエンディングから最終シナリオに続いていくので、あまり深くは語らない。
ただ言えることは、やっぱり霞はムカツクってことで(爆)
いい子なのはわかるんだけれど。

○式子 in chaos
わかるような気がするし、納得できない面もある。
早い話が、「私には恋愛なんて柄じゃない」ってことなのだろうけども。
理性的であるがゆえに、なんだろうか。
ともあれ、俺はこのシナリオだけが未だによくわかっていない。
言葉で煙にまかれすぎか。

○椎奈 automaton
このゲームのテーマに可能な限り近いところにあるのがこのシナリオだろう。
後半の椎奈と母親の彩子のセリフは、「こいつらはこの世界をゲームだと認識しているんじゃないか」と匂わせているようだった。
オートマトン(あらかじめプログラムされた法則で動くゲームのキャラ)ではなく、人間(モニタの外側、この現実の世界)になるためには、そこに一番近い場所にいる者である主人公(=プレイヤー)と接するしかないと思ったから。
最終的に彼女がどういう結論を出したのかよく理解できていないが、彼女は自分たちの未来にあるものが楽園なのだと気づいたのだろう。

○悠歌 divine
このシナリオも椎奈同様、作品のテーマに最も近いところにある。
彼女は、「その人のことがわかってしまったら、もうその人のことでどきどきできなくなる」と言う。
そこで主人公は提案した。
人間にとって最も大きな情報認識機関である視覚を閉ざすことで、相手のことについての情報を遮断する。 何か間違っているような、正論のような、複雑なシナリオだった。
でも俺的には一番好き。この話。
こういうのもアリか、って素直に感じた。

○GENESIS
椎奈や悠歌のシナリオの延長線上にあるような展開で、かつ作中におけるテーマの正体を露呈してしまっているのがこのシナリオだろう。
この世界は目に見えない何かに支配されていて、自分たちはそのシステムに自動的に動かされているだけ。
その束縛から解放されるには、人を支配するしかない。
この場合の「人」は作者含むモニタの外にいる人間たちのことで、「支配」とはゲームのキャラクターに過ぎない自分たちが、造物主たる人間を支配し返すことなのだろうか。
そうして初めて、自分たちは「人間になれる」と言ってるんじゃないだろうか。
ここに来て、sense offの登場キャラ、慧子が現れる。
sense offでは彼女は脳だけの存在で、最後は脳だけでは自我を維持することができずに朽ち果ててしまうのだけど、主人公の内的世界に自身の存在をフィードバックさせて、主人公の心の中でいつまでも……というのがあのシナリオの俺的解釈で。
テーマ的にはあれとまったく同じことが言えるのではないだろうか。
以下、慧子シナリオのラストより抜粋。

「檻の中にいるわたしたち」
「けれど檻の中に逃げ込むことは後退じゃない」
「それは、未来への前進」
「わたしの中にあなたはいるし、あなたの中にわたしはいる」
「わたしたちは、檻の中でわたしたちの姿を創る」
「檻の中に、変革された未来がある」
「閉じたモノローグの先に、未来が――」
「歴史は、もう始まっている――」

これを未来にキスをのテーマに置き換えると、かなりしっくりくる。
「ここはゲームの世界で、ここで物語は終わるけど、それから先の自分たちは何の概念に束縛されることのない自由な存在なんだ」
確かに。
プログラムが終わり、支配が終わり、それから先も世界が続いていくなら、確かにそこは圧倒的なパラダイスだ。
互いが自分の中にいる相手のことを想っているだけでも、その条件ならそれ以上の幸福はないだろう。 ただこのテーマを実際の現実にあてはめていいものかどうかと言えば、正直躊躇わざるを得ない。
だからこのテーマは、現代人(というよりヲタク?)にとってのエロゲーの位置づけなのだと思う。
エロゲーもまた恋愛みたいなもんなんだよ、と言ってるような気がした。
結局、表題における「恋愛の究極形」というのはゲームのキャラクターたちにとってのものでしかないんじゃないだろうかと。
現実にいる人間たちにとっては未来の可能性を。
この支配(法とか?)から抜けた先には、楽園が待っているんだ、と。
現実見ろよ的な作品が氾濫してる昨今で、その逆を肯定してるゲームというのも珍しい。
と、思いついたことを書き並べてかなりまとまりない文章になっているのでここらで締めたいと思う。

○総評
とりあえず言えることは、俺的には痛すぎる話でした。
こういう恋愛がアリなら、俺の遙を想う気持ちもアリなんだ!ってちょっと思っちゃったんで(爆)
するってーと俺って歴史の最前線?
最後のジェネシスとやら超えられる?
あと三年待ってください。それまでに結論出します(爆死)
俺にとっての水月が現れてくれることを願って……。
って全然総評じゃねーし。
万人には薦めませんが、珍しいものがみたいならオススメです。
あと日常のテキストを耐えられる根気のある人(爆)

総合 シナリオ グラフィック サウンド 萌え度 賽銭箱背徳遙
75点 80点 69点 70点 50萌 100萌